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    眠る場所

    隠密浩大の災難 (続 編)



     夕鈴が刺客に矢で襲われ、それが捕えられるまでの間、夜は黎翔の私室で寝ていた夕鈴は、刺客が捕えられた事により新しい己の私室へと戻った。
     しかしそれからというもの、彼女の顔色が良くない。

    「じゃあ、そろそろ部屋に戻るね。」
    以前と同様に夕鈴の私室に赴いていた黎翔は、己の私室に戻る頃合いになった事を彼女に告げる。
    「あっ、はい。」
    彼女が返答すると、風がカタカタと窓を震わせた。黎翔が居る間は気にもならなかったその音に、夕鈴の体はピクリと跳ね、チラリと横目で窓を見た。
    「・・・おやすみ、夕鈴。」
    黎翔は何事も無いかの様に就寝の挨拶をする。
    「おやすみなさいませ・・・。」
    部屋を出て行く黎翔を見送った夕鈴は、寝所へ入り寝台に横たわる。窓が風で音を立てる度に心臓が跳ねる。
    『大丈夫、警備を増やしてくれたんだし、刺客が来ても部屋の中まで入る事は出来ない筈だわ。』
    彼女は上掛けを頭まで被り、出来るだけ音を聞かない様に努める。しかし中々眠る事は出来ない。
     どの位時が経ったのだろう。コツッコツッ、と男のモノらしき足音が寝所の入口から近付き、
    『嘘、刺客?』
    上掛けの下で体を強張らせ、瞼を固く閉じる彼女に、足音の主が声を掛けた。
    「夕鈴?」
    『陛下?部屋に戻ったんじゃないの?さっき眠れているのかって聞かれたし、まだ眠れないなんて心配掛けるわよね?』
    夕鈴は固く眼を瞑り、寝たフリを続ける。
     黎翔は寝台の脇に立ち、上掛けを捲ると彼女の横に身を横たえた。
    『ええ!何してるの!?これっ起きた方が良いわよね?ホントッ、何考えてるの!?』
    そんな事を考えている間に、黎翔は腕の檻に閉じ込めるかの様に彼女を抱き締めた。
    『ちょっ、寝台でっ、抱き締めるなんて!私、偽物の妃なのに!?』
    夕鈴は頭の中がグルグルして思考が定まらない。しかし黎翔は、抱き締めているだけで他に何をする訳ではない。
    『あ・・・陛下の匂い・・・こんなの恥かしいのに、なんて安心出来るんだろう。』
    安心出来る彼の薫りと体温で、体の力を抜いた夕鈴は、ここ数日の寝不足も手伝い、あっさりと思考を手放し眠りへと落ちて行った。

     翌朝、眼を覚ました夕鈴の隣には、既に黎翔の姿は無い。
    「陛下、もしかして・・・」
     身支度を整え朝餉を済ませた夕鈴は、政務室で官吏達と共に黎翔を待つ。程無くして姿を現した黎翔は彼女に歩み寄り、
    「妃よ、今日は随分と顔色が良い。昨晩はぐっすりと眠れた様だな。」
    「はい。ご心配をお掛けして申し訳ございません。」
    「私は君の夫だ。心配するのは当然の事だ。」
    「ありがとうございます。あのっ」
    黎翔は夕鈴の言葉を断つ様に、彼女の唇を指で塞いだ。
    「退屈だろうが、大人しく待っていてくれ。午後は老師の話を聞きに行くのだろう?昼餉は共に摂ろう。」
    「・・・はい。」
    黎翔が席に着き、政務が始まった。夕鈴が視線を漂わせると方淵と眼が合う。しかし何時もの様な睨む視線では無く、直ぐに逸らされた。彼も一応は心配していたのだろう。化粧をしているにも係わらず彼でさえ気付く程、夕鈴の顔色は悪かったのだ。
     そしてその夜も夕鈴が新台に横たわり、暫く経ってから黎翔は彼女の隣に潜り込み抱き締める。
     
    そんな事が数日続き、何時もの様に黎翔が夕鈴を抱き締めると、彼の胸元が薄らと湿った。
    「夕鈴、何故泣く。私にこうされているのは、それ程厭なのか?」
    夕鈴は涙を流しながら首を横に振る。
    「では何故だ?」
    「・・・こうして頂く事に慣れてしまったら・・・陛下と離れる事が出来なくなるんじゃないかって。私、実家に帰ってから1人で眠れるんでしょうか・・・。」
    黎翔は彼女の頭に口付け、彼女を抱き締める腕の力が強まる。
    「今は眠るんだ。先の事は何も考えずに。」
    甘く優しい、あやす様な声で囁く。
    「はい・・・」
     やがて夕鈴から穏やかな寝息が零れる。
    「1人で眠る必要など無い。君はこれからも、ずっと私の腕の中で眠れば良い。」
    涙の残る彼女の瞼に口付けた黎翔も、浅い眠りへと意識を沈めて行った。


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