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    偽りの代償 ( 2 )

     夕鈴が後宮を去ってから一月程経ったある日。地方の視察に赴いていた水月が、その報告の為馬車で王宮に向かう途中、
    「ちょっと停めてくれるかな。」
    御者に指示し、停車した馬車を降りた水月は、後ろ姿の女性の腕を掴んだ。驚き振り向いた女性は夕鈴だった。
    「やはり貴女でしたか。この様な場所で何をされていたのですか?」
    「あ、あの・・・仕事を探して・・・」
    「仕事?何故貴女が仕事等を・・・」
    「いっいえ、私に会った事は誰にも言わないで下さい。失礼します。」
    逃げるように走り出した夕鈴を追い、再度腕を掴んだ水月は、
    「誰にも言いませんから、私に理由を教えて下さい。」
    理由を言うまで腕を離しそうにない水月に夕鈴は、
    「私は見ての通り只の庶民で・・・。弟の学費の為に、仕事を探していたところなんです。」
    「状況はよく解りませんが、仕事を探しているのならば、私の使用人の仕事をしませんか?」
    「え、水月さんの?」
    「私の私邸には、父は滅多に来ませんし、よく遊びに来ていた紅珠は後宮入りが決まり、今はその準備に追われ遊びに来る事は無くなりました。依って貴女を知る者はいません。住み込みですが如何でしょう?」
    「紅珠が、いえ、紅珠さんが後宮入り・・・紅珠さんが妃という事は、やっぱり・・・」
    「ええ、正妃として決まりました。気になりますか?」
    「いっいえ、本当に良いんですか?私なんかで。」
    「丁度使用人が一人、婚姻の為辞めてしまったんです。」
    「お、お願いします。一月も見付からなかったんで、早く見付けたかったんです。」
    「では明日迎えに来ます。ご家族に話をして、正午頃に此処で待っていて下さい。私は今から王宮へ行かなければならないので、今日は失礼しますね。」
    「はい、ありがとうございます。」
    夕鈴は水月の後ろ姿に深深と頭を下げた。彼を見送った後、夕鈴は家に走って帰り、
    「青慎、仕事が見付かったわ。また住み込みだけど、これで学費を払えるわね。」
    「姉さん、また住み込みって・・・」
    「心配ないわ。前のバイトで知り合った人なの。変ってるけど良い人だから安心して。」
    「ごめんなさい、僕の為に・・・」
    「貴方が謝る事ないわ。しっかり勉強するのよ。」
    「うん」

     翌日の正午、夕鈴が水月と再会した場所へ向かうと、既に水月がその場で待っていた。夕鈴は彼に走り寄り、
    「ごめんなさい、お待たせしてしまって。」
    「いいえ、大丈夫ですよ。では参りましょう。」
    水月の馬車に乗り込み、2人は彼の私邸へ向かった。私邸に着くと、水月は彼女を部屋まで案内する。
    「こちらの部屋をお使い下さい。」
    その部屋は以前、夕鈴が紅珠の私邸に行った時に使用した部屋と同じくらいの広さがある。
    「あの、水月さんの所の使用人って、他の方もこんなに広い部屋を宛がわれてるのですか?」
    夕鈴の問いに、
    「いえ、こちらは貴女の為に用意した部屋です。」
    水月は答え、
    「だっ駄目です。私は使用人として来たんですから、他の人と同じ様に扱って下さい。」
    「貴女は本当に面白い方ですね。言い方を変えましょう。使用人と言うより私の相手をして欲しいのです。紅珠が妃に決まり、琴を教える相手も居なくなってしまって暇なのですよ。貴女との会話は退屈しません。ですから私の相手をして下さい。」
    「あの、でも・・・」
    「ちゃんと給金は払いますから。そう言えば昨日、弟さんの学費と仰っていましたが、官吏を志望されているのですか?」
    「はい。弟は私と違って頭が良いですから、きっと官吏になれます。」
    「そうですか。では学問所の休みの日は、私が勉強を教えてあげましょう。」
    「いえ、それは有り難いんですけど、その・・・」
    「どうしましたか?」
    「私の家族は、私が妃だった事を知らないんです。水月さんの事も、王宮の掃除婦をしている時に知り合った人だって、説明してあるんです。」
    「何故ご家族は、貴女が妃だった事を知らないのですか?」
    「・・・・・・」
    「無理には聞きません。しかし、驚きましたよ。貴女が庶民だったなんて。王宮の事情に疎かった理由が解りました。」
    「あの、水月さん、この事は・・・」
    「誰にも言いません。ああ、そうだ。衣装も数着用意してあります。そちらに着替えて頂けますか。私は庭に居ますので茶の用意をして来て下さい。」
    「はい、解りました。それと私は使用人なんですから、敬語は不要です。」
    「ふふ、そうですね。でも直ぐには直せそうもありませんから、徐々に直しますよ。」
    「それじゃ、着替えたらお茶をお持ちしますね。」
    「はい、お願いします。」
    水月は庭に向かい、夕鈴は衣装を着替える。それは使用人が着る様な衣装では無く、紅珠が着ていた物と変わらない位の物だった。茶の用意し、四阿で待つ水月の元へ赴いた夕鈴は、
    「あの、水月さん、この衣裳って。」
    「う~ん、やはり、貴女と紅珠とでは似合う物が違いますね。それは紅珠に買った物だったのですが、少々大きかったのです。明日、仕立屋を呼びましょう。」
    「ちょっと待って下さい。私は使用人なんですよ?仕立屋なんて不要です。」
    「私の相手をして貰うのですから、それなりに着飾って欲しいのです。」
    「でも、これじゃ、前の仕事と・・・」
    「前の仕事?」
    「いえ、なんでもありません。」
    その後2人は、茶を飲みながら雑談をして過ごした。

     その夜、就寝の為寝台に横たわる夕鈴は、以前の妃バイトと変わらない様な待遇に気分が落ち着かず、なかなか寝付けないでいた。そして寝台から抜け出し、庭に出て夜風に当たる。
     そこへ笛を手にした水月が通り掛かり、
    「おや、お妃・・・いえ、夕鈴さん、どうされましたか?」
    「水月さん、ちょっと気持ちが昂ぶっちゃって、寝付けないんです。」
    「そうですか。では私が眠れる曲を奏でて差し上げましょう。夜は冷えます。どうぞ寝所にお戻り下さい。」
    夕鈴は寝台に戻り、水月は笛を奏でる。
     そうして半刻ほど笛を奏でていた水月が、夕鈴の寝所の様子を伺うと、どうやら彼女は眠れた様だ。上掛けがゆっくりと上下している。
     水月は静かに寝台の傍らに寄り、彼女の顔を覗き見る。
    「へい・・・か・・・」
    夕鈴の睫毛は濡れ、涙が一粒流れ落ちた。
    「離れ離れになっても・・・好きなのですね、あの方が。」
    水月は夕鈴の瞼に口付け、その場を後にした。



     それからと言うもの、夕鈴は水月の話し相手として過ごしているが、全く出仕しようとしない水月に、口煩く出仕させようと奮闘していた。
     そして青慎の学問所が休みの日、初めて彼を水月の私邸に呼んだのだ。青慎と顔を合わせた水月は、
    「誰が見ても姉弟と解るほど、良く似てますね。」
    と、少々笑いを堪えていた。
     勉強は水月の自室で行われ、それを始める前に水月は青慎に質問をする。
    「君は夕鈴さんの、以前の仕事をご存知ですか?」
    「えっと、王宮で掃除婦をしていた筈ですけど。水月さんとはそこで知り合ったんですよね?」
    「いえ、それ以前の仕事です。」
    「飯店の賄い婦をしてました。」
    「う~ん、着飾る様な仕事ではありませんよね。」
    「はい?」
    「いえ、何でもありません。」
    「・・・姉さんは、もう李翔さんと会う事は無いんでしょうか。」
    「李翔?李順じゃないですか?」
    「いいえ、李翔さんです。姉さんの上司の人です。」
    「そんな名の人は知りませんが・・・」
    「えっと、短い黒髪で、眼鏡を掛けていて、背が高い人です。」
    「こんな顔の人ですか?」
    水月は似顔絵を描いてみたが、
    「・・・えっと~・・・」
    「どうやら私には絵の才能は無い様です。描いてみてくれますか。」
    「はい。ん~と・・・」
    青慎の似顔絵は上手かった。
    「あの方ですね。名を偽って身分を隠したんですね。」
    「えっ、身分?」
    「なんでもありません。君はどうしてこの方に会ったんですか?」
    「初めは姉さんが休暇の時に送って来たって。それで家に泊まりました。」
    「その様な事があったのですね。」
    「あのぉ、なにか問題でも?」
    「なんでもありませんよ。でも君は、どうしてこの人の事が気になるんです?」
    「姉さんは隠したがってたんですけど、この人とは恋人同士の様でしたから。姉さんにはずっと世話を掛けてきましたし、そろそろ姉さんにも、自分の幸せを考えて欲しいなと思ったんです。」
    「そうですか。君にもそう見えましたか。」
    「あの、違うんですか?」
    「どうでしょうね。さあ、話はこの位にして、勉強を始めましょうか。」
    2人は夕刻まで勉強に集中し、夕餉まで御馳走になった青慎は、辺りが暗闇に包まれる前に家へと帰って行った。


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    No title

    あぁ・・・、最近気がついたのですが、私は夕鈴と陛下くっついてほしいけれどすれ違う事もあるのが好きみたいです^^そのシチュエーションがドツボなのかもですw最終的にはくっつく事希望ですがw

    お久しぶりです><
    あ、ちなみに受験は無事合格して今はちゃんと新社会人としてお仕事してますよ!!
    お遊び感覚でまた動画作ったので、連絡だけ。ストリー性は全くないです。
    http://www.nicovideo.jp/watch/sm17736123
    http://www.nicovideo.jp/watch/sm17745867
    まったく持って狼陛下のイメージではない曲使ってますが><;お暇なときでもよろしければご覧くださいませ~。

    そうそう、私以外にも狼陛下MAD投稿者様現れましたよ♪

    Re: No title

    >rithu様

    お久しぶりです。
    受験合格( o ̄▽)o<※*:'゚。.お*:゚・め'゚゚:。で'・:+と*:。*・う':゚:*♪:'゚`。+:
    ご連絡ありがとうございます。カラー大変だったでしょ?
    夕鈴と陛下が向かい合って歌ってたら・・・(^▽^@ )。o0○(ウヘヘ…ホッコリ~)
    他の方のは、某イラストサイト様ですね。
    リンクさせて頂いているゆこ様の「心赴くまま」から行く事が出来ます。
    ここでサイト名を出して良いものか・・・なのでヒントは「NO.28」です。
    可愛いものから綺麗なものと、多彩なサイト様です。是非ご覧になってみて下さい♪

    新社会人となって、今は覚える事が多く大変だと思いますが頑張って下さいねw
    プロフィール

    美夜

    Author:美夜
    管理人は熱しやすく冷めやすいです。飽きるのが早いです。長続きしないと思われますが、どうぞそれまでお付き合いください。

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