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    彼女の噂

     悪夢を消して ( 番外編 )




     “妃連れ去り事件”から数日が経ち、侍女と浩大の看護を毎日行っていた夕鈴は、午前だけ再び政務室に侍るようになった。侍女の怪我はほぼ完治しているが、浩大はまだ時間が掛るだろう。午後は浩大の看護を引き続き行う為、掃除婦バイトは暫くお休みだ。
    そんな夕鈴が、何故か官吏の間で噂されている。噂の内容は事件とは関係ないもの。しかし、まったく関係ないとは言い切れない。
    午後の政務が終わり、後片付けをしている李順と黎翔が2人きりになった。
    「李順」
    「はい。何でしょうか。」
    「最近、夕鈴が噂されているようだが、お前は内容を知っているか?」
    「夕鈴殿の噂ですか?事件に関しては緘口を出しておりますし、内容は解りかねますが。調べますか?」
    「いや、事件に関してじゃないのなら、問題ないだろう。」
    李順に問うてみたが、彼は噂自体知らないらしい。しかし、夕鈴が政務室を後にする時の、官吏の視線が気になる。

     翌日、昼休憩を早めに切り上げ、政務室に向かった黎翔は、回路を曲がったところで官吏2人が話しているのを耳にした。その内容は夕鈴に関するものだった。
    『例の噂話か?』
    黎翔は気配を消し、身を潜めてその会話に聞き入った。
    「本当に変わられたよなぁ、急に艶が増されて。私も早めに書庫へ行き、片付けの手伝いをしてみたんだが、僅かに頬を染め上目使いで微笑まれ、お礼を頂いた時には胸が高鳴ってしまった。」
    「そうだろ。政務室を出て行かれる時の、はにかんだ様に俯かれている感じも、庇護欲が湧くよな。」
    「方淵が羨ましいよな~。睨み合いとは言え、お妃様の視線を独占出来るんだもんな。」
    「おい、お前達。何をしている、まもなく政務が始まるぞ。早く中に入ったらどうだ。」
    方淵の声がし、
    「噂をすれば・・・だな。下手すると陛下より視線を独占してるんじゃないか?」
    「そうかもな。陛下に見詰められたお妃様は扇や袖で顔を隠されてしまうからな。」
    話し込んでいた官吏は、足早に政務室に向かった。
    「・・・・・・」
    夕鈴の噂って・・・李順に噂を調べさせなくて助かったな。しかも聞かれたらまずい。なんとかしないと。それと方淵だ、奴もなんとかしないと。黎翔はある計画を立てた。

     翌朝、夕鈴は何時ものように早めに政務室へ行き、書庫の整理を始めた。
    「お妃様、おはようございます。今朝もお早いですね。」
    「あ、おはようございます。私はこの程度のことしかお役に立てませんもの。」
    「大変助かっております。お妃様が書簡を整理して下さるお陰で、政務を円滑に進めることが出来ます。」
    「そう言って頂けるとうれしいですわ。」
    官吏が夕鈴の直ぐ傍まで足を進めようとした時、
    「夕鈴、もう来ていたのか。」
    黎翔が声を掛け、
    「陛下、おはようございます。今朝はお早いのですね。」
    礼を執る夕鈴を、優しく抱き締めた。官吏も数歩下がり礼を執っている。
    「私の愛らしい妃が、朝早くから、このような場所に1人でいるのが不安になってな。どうやら毎朝、他の者もいたようだが。」
    「ええ、いつも官吏の方が手伝いに来て下さってます。」
    「ほぉう、随分と仕事熱心な者が居る様だ。だが、このような場所に2人などになっては、ますます不安だ。」
    「へ、陛下。何を仰ってるんですか。そんなこと有る訳ありません。」
    「現にこうしてお前を口説こうと、朝早くから足を運んでいる者が居るではないか。」
    黎翔は、脇で礼を執っている官吏に鋭い視線を向けた。
    「いえ、私はそのような・・・」
    官吏は黎翔の視線に、顔を蒼白させ答えた。
    「失礼します。陛下、お呼びとの事ですが。」
    方淵が書庫に姿を現した。
    「ああ、なにやら私の妃を噂している者がいるようなのでな。まったく不愉快だ。しかも懸想している者もいるらしい。」
    「はい?お妃様にですか?」
    方淵は脇にいる官吏の顔を横目で見る。
    「ああ、お前から周りに注意をしておいてくれ。私からでは角が立つからな。」
    そう告げながら黎翔は、衣装の袖で夕鈴の顔を覆い、彼女の耳に口付けを施し、耳の中を舌で舐め上げる。
    「や・・・ぁん、陛下。」
    夕鈴が甘い鳴き声を上げると、方淵は顔を赤らめ俯き、官吏は下半身を疼かせ、そこは衣装を僅かに持ち上げている。官吏は少し腰を引き、礼を執っている腕で顔を隠す。横目でその様子を伺っていた黎翔は、官吏の前に静かに歩み寄ると、
    「なんだ、これは?私の可愛い妃で何を想像したのだ?」
    と、官吏の股間の物を掴んだ。
    「握り潰しても良いか?」
    黎翔がその手に力を込めた瞬間、それは脈打ち、官吏から吐息が零れる。
    「うっ・・・はぁぁ」
    「・・・・・・」
    「・・・・・・」
    黎翔は表情を崩さず、方淵は呆然と官吏を見詰める。
    「ももももっ申し訳ありません。」
    官吏は顔を真っ赤にし、涙を浮かべ黎翔に叩頭した。
    「・・・早いな・・・今回は見逃してやるが次はないぞ。解ったのなら、さっさと出て行け。」
    「はっはい、失礼致します。」
    官吏は転げる様に、慌てて書庫から出て行った。
    「私も失礼して宜しいでしょうか。」
    「ああ、他の者にも注意をしておいてくれ。」
    「御意」
    方淵が書庫を後にする。すると夕鈴は、
    「陛下、あんな事言ったら失礼ですよ。口説くだとか懸想しているだなんて・・・有る訳ないじゃないですか。」
    「ううん、最近夕鈴噂されてたんだよ?」
    「噂?」
    「うん、夕鈴に艶が出てきたとか、庇護したくなるとか。」
    「へ?何なんですか、それ?」
    「夕鈴が生娘じゃなくなって、色っぽくなったって事だよ。」
    「きっ生娘って・・・あの・・・」
    夕鈴は顔を赤くし俯いてしまう。
    「噂話を李順に聞かれたらまずいからね。手を打っておかないと。それに・・・。」
    黎翔は夕鈴の顔を上げさせ、顔中に口付けを降らした。
    「君の愛らしさは、私だけが知っていれば良い。この瞳に映して良いのは私だけだ。良いな、夕鈴。」
    「・・・それは無理ですよ。」
    夕鈴と黎翔は深い口付けを交わす。
    「夕鈴、寝所で続き「陛下も出て行って下さい。片付けの邪魔になります。」」
    「・・・手伝うよ。」

    それからというもの、毎朝、書庫へ向かう夕鈴を黎翔が迎えに行くのであった。噂は囁かれる事もなくなり、李順の耳に入る心配は無くなったのである。方淵はと言うと、夕鈴と眼が合うと顔を赤くし、視線を泳がせてしまう為、睨み合いで夕鈴の視線を独占することは、かなり減ったのである。



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    管理人は熱しやすく冷めやすいです。飽きるのが早いです。長続きしないと思われますが、どうぞそれまでお付き合いください。

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