FC2ブログ
    コンテントヘッダー

    スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    コンテントヘッダー

    隠し事はいつかはバレる?

    悪夢を消して ( 続 編 )



     “妃連れ去り事件”から数か月経ち、久々に政務が早く終わった黎翔は、愛しの妃と夕餉を共にしようと夕鈴の部屋に来ていた。事件の後、大臣達の処分等で仕事が増えるはずだったが、李順が夕鈴の事を気に掛け、黎翔を早めに後宮へ帰らせていた。そのツケがここ一月程の激務となって回ってきていたのだ。お陰で黎翔が後宮の私室へ戻るのは深夜だった。夕餉の用意が整い、黎翔と夕鈴が卓に就いた時、
    「う・・・」
    彼女が口元を抑え、外に飛び出した。
    「夕鈴!どうした。」
    黎翔が追い駆けると、彼女は庭に下りる階段の途中で荒い息を吐きしゃがみ込んでいた。
    「どうした?吐き気がするならここで吐いてしまえ。」
    と、夕鈴の背を摩った。
    「いいえ・・・もう大丈夫です。治まってきました。」
    胸に手を当て呼吸を整えている。
    「匂いが強かったか?食べられそうか?」
    「いいえ、少し胃の辺りがムカムカして・・・」
    「今日はもう休んだほうがいい。寝台に連れて行く。後で湯薬を運ばせよう。」
    黎翔は夕鈴を抱き上げた。
    「陛下!あ、歩けますから降ろして下さい。」
    顔を真っ赤にし、慌てる夕鈴を無視して寝台へと向かい、そっと彼女を横たわらせた。
    「本当に大丈夫なのか?少し熱があるようだ。侍医を呼ぼうか?」
    黎翔は夕鈴の頬を撫でながら問うと、
    「いいえ・・・侍医より老師を。」
    「何故老師なんだ?」
    「少し聞きたい事があるんです。」
    「ふぅん?」
    侍女に老師を呼ぶように指示を出す。この侍女は妃連れ去り事件の時に手傷を負った侍女だ。怖がって辞職すると思ったのに、ずっと夕鈴に仕えたいと言ってきた。あの時夕鈴は、献身的に侍女2人と浩大の看護をしていたからだろう。程無くして老師が現れ、
    「これは陛下。こちらに御出ででしたか。妃の体調が思わしくないと窺ってきましたが。」
    「あぁ、夕鈴がお前に聞きたい事があるらしい。」
    「侍医でなく私にですかな?はてさて、何でしょうな。」
    そう言い、寝台を覗き込み、
    「お妃、聞きたい事とは如何様なことですかな?」
    夕鈴は老師の姿を確認すると赤い顔をし、
    「あの、陛下。少し席を外して頂きたいのですが・・・。後、お人払いをお願いします。」
    「そうなのか?ならば居間にいるから終わったら呼んでくれ。」
    と、夕鈴の額に口付けし、侍女達を下げさせると居間へと行く。するとたいして時間も掛からないうちに老師に呼ばれた。
    「なんだったんだ?」
    と彼女の髪を撫でながら伺うと、
    「どうやらお妃は懐妊したようですな。」
    と、眼をキラキラさせた老師が答えた。そう、黎翔と夕鈴は“妃連れ去り事件”以降も政務が早く終わった日は肌を重ねていたのだ。しかも黎翔の行為が激しすぎて、翌日の政務に夕鈴は侍ることが出来ないほどに。そんな事で李順にバレないのだろうか?
    「真か?夕鈴。」
    「みたいなんです・・・どうしたら・・・」
    黎翔は興奮し、戸惑う夕鈴を力強く抱き締め、老師がいるのも係らず、
    「夕鈴!うれしいよ。本当なんだね。楽しみだよ、僕たちの子供!」
    と、無意識に子犬陛下となってしまい、歓喜の声を上げた。
    「でも李順さんになんて言えばいいのか・・・バイト首になっちゃったら、借金と青慎の学費も・・・」
    彼女は顔を俯けた。
    「う~~~ん、李順かぁ。ね?お腹は何時頃から大きくなってくるの?」
    「まだ暫くは大きくならないかと・・・」
    「じゃあ、掃除婦のバイトはお休みにしよう。体を大事にしないとね。懐妊のことは李順に伏せて於いて、大きくなってきたら打ち明けよう。そうすれば、暫くは臨時妃のバイト代は入るでしょ。」
    「そんな事しちゃって、いいんでしょうか・・・」
    「大丈夫。僕に任せて於いて。あとさ、夕鈴の実家にも行かないとね。お嫁さんの家族にご挨拶しないと。」
    うれしいな~楽しみだな~と、黎翔の顔は崩れっぱなしだ。
    「夕鈴、体を労わってね。ちゃんと食事も摂るんだよ。食べられそうな物を老師に用意させるから。」
    「はい。」
    眼を輝かせている老師も、
    「そういう事なら何でも協力致しますぞ。」
    「オレもオレも~。何でも言い付けて。」
    すっかり傷が癒え、復帰していた浩大が窓の上部から、逆さに顔を覗かせた。
    「お妃ちゃんには世話になったし、最近、刺客どころか密偵もいなくて暇だからさ~。オレも協力するよ。」
    「お主はお妃に用意した食べ物を盗みに来るんじゃろ!」
    「え~~、そんなことしないよ。余ったら貰うけど。」
    2人のやり取りを見ていた夕鈴はクスクスと笑い、黎翔は夕鈴の腹部をそっと撫で、彼女の唇に熱い口付けを施した。
    「っ!陛下、見られるじゃないですかぁ!」
    真っ赤な顔で、小声で怒り出した夕鈴に、
    「ごめんね夕鈴。君に『君だけを愛し、君だけを守る』って誓ったのに。」
    「え?」
    夕鈴は驚愕した青い顔で、黎翔を見上げ震え出した。
    「え?陛下。それって、ほっ他に妃を・・・」
    「夕鈴だけじゃなくて、このお腹の中の子も愛し、守らないと。」
    「もう、陛下。驚かさないで下さい。」
    夕鈴は黎翔の胸元を、ポカポカと叩き、
    「はは、ごめんごめん。怒ってても可愛いなぁ夕鈴は。この子だけでなく、僕と夕鈴の間に生まれる子、みんなを愛し守らないとね。」
    「そうですね。」
    黎翔は、ちゅっちゅっと夕鈴の頬を啄んでいた。
    「あ、そうじゃ、陛下。」
    甘い空気を断ち切るという無粋な老師に、黎翔は不機嫌な顔を向けた。老師は気にせず、
    「閨での行為はお控え下され。子が流れてしまう場合がありますからな。念の為、無事御出産されるまで控えて頂きたいですな。」
    「・・・・・・」
    「御出産後も、暫くはお妃の体も安定しませんし、無理でしょうが。」
    「・・・・・・どのくらいの期間?」
    「1年強と言ったところでしょうか。」
    「ええええええええ。そんなに?一ヶ月でも我慢するの大変だったのに・・・しょうがいないか・・・赤ちゃん楽しみだし。夕鈴!出来るだけ早く産んじゃってね。」
    「陛下・・・それは無理です・・・はぁ~。そんな事で拗ねないで下さい。」
    「だって僕たち新婚なんだよ?まだ数カ月しか経ってないんだよ?なのに出来ないなんて・・・」
    閨での事でしゅんとし出した黎翔に、夕鈴は溜息を吐き呆れていた。一方老師は、浩大にだけ聞こえる様な小声で、
    「なぁ小僧よ。」
    「なに?」
    「陛下の様子が奇怪しくないかの。」
    「奇怪しいって何処が?」
    「先程から子供の様な話し方をしておる。」
    「え?張のじーちゃん知らなかったの?陛下の二面性。」
    「ほえ?」
    「お妃ちゃんが言うところの子犬陛下も、陛下の本質なんだよ。」
    途中から声を潜める事を忘れた2人の会話に、夕鈴と黎翔は、
    「・・・陛下。バレましたね・・・」
    「あ~~~、やっちゃったね、李順に怒られそう。」
    先程より深い溜息を吐き、頭を抱えながら呆れる夕鈴なのであった。



    夕鈴の懐妊発覚から数週間が過ぎ、午前の執務が終わり黎翔と李順が2人きりで居た時、
    「あれ以来、刺客どころか、大臣達からの縁談すら無くなりましたね。」
    徐に李順が口を開いた。“あれ以来”とは妃連れ去り事件の事だろう。
    「娘まで晒し首にしたんだ。当然だろう。」
    「そうですね。ところで陛下。」
    「うん?」
    「夕鈴殿の借金ですが、次の返済で完了となります。」
    「そうなの?」
    「ええ。連れ去り事件での危険手当は大きかったですからね。された事を考慮すると妥当な金額だったと思いますが。あれで一気に借金が減りましたね。」
    「ふ~ん。そっかー。夕鈴の借金終わっちゃうのかー。じゃあ臨時妃も終了って事なんだよね。寂しいなー。」
    「はぁ~陛下・・・いい加減、打ち明けて下さっても宜しいのではないでしょうか?」
    「なにを?」
    「誤魔化さないでください。掃除婦バイトを数週間休み、執務室に侍っていても時折具合が悪そうにしているのです。おまけに政務が早く終了した翌日は、夕鈴殿が必ず体調を崩されていました。懐妊してしまったんでしょう?本物の妃として娶るおつもりなんでしょう?解らないとでも思っていたのですか?」
    「あ~~バレちゃってた?えへ。」
    「誰でも解りますよ。」
    李順は、はぁ~と溜息を吐き、眼鏡を外して眉間を揉み、再び眼鏡を戻した。
    「なんで隠そうとしていたんですか?」
    「うん。借金返済と学費稼ぎの為にね。」
    「例の事件の時からのご関係ですか?」
    「李順てさ、その辺りは鈍感で気付かなかったんだよね。」
    「はい?何がですか?」
    「あの頃、夕鈴の噂あったでしょ?」
    「ああ、別に調べる必要はないと仰った噂ですね。」
    「そうそう。周りは気付いてたのにねぇ。」
    「はい?夕鈴殿が臨時妃だ・・・と言う事をですか?」
    「う~ん、そうじゃないんだけどさ。まぁ、この話は終わりにしようよ。えっと、借金返済と学費稼ぎの話だったっけ?」
    「そうですね、話を戻しましょう。本物のお妃にするおつもりだったのなら、借金なんて帳消しにしましたよ。本物であれば、弁償させるなんて事は無かった物なんですから。まぁ本物ならば、バイト代を払う必要もなかったのですけどね。」
    「借金はそれで良くても学費稼ぎがねー。」
    「ふむ、臨時妃のバイト代と借金は本来なかったものと考え、返済に充てられた分の危険手当を還付するということで如何でしょう。」
    「危険手当を?」
    「実際に、囮役で危険な目に何度も合わせてしまいましたからね。本物の妃なら囮役なんてさせる事もなかったですし。それを分割して仕送りしたら如何ですか?然程長い期間、仕送りが必要と言う事じゃないでしょ?」
    「うんうん。それでいいよ。青慎くんが登用試験に合格するまでだし夕鈴も安心するよ。でも出産したら、掃除婦バイト始めるとか言い出さないかな?」
    「本物の妃になられたら、当然掃除婦バイトは辞めて頂きます。それに彼女は子供を乳母に預けたりしないでしょ。育児でバイトどころじゃないでしょうね。」
    「それもそうだね。あ、早速夕鈴にこの事知らせに行っていいかな?」
    「どうぞ行ってらっしゃいませ。午後の政務には遅れないように戻って下さいよ。」
    「うん。僕も父親になるんだから、しっかり働かないとね。行ってくるねー。」
    黎翔は上機嫌で執務室を後にした。その姿を見ていた李順は、
    「はぁ、冷酷非情の狼陛下はどこへやら・・・」
    蟀谷を抑え、深い溜息を零していた。
    「李順。言い忘れたけど。」
    黎翔はひょっこりと衝立から顔だけ覗かせ、
    「なんでしょうか?」
    「夕鈴は正妃にするからね。」
    「それは反対したら聞き入れて下さるのでしょうか。」
    「ううん。聞き入れないね。」
    「畏まりました・・・。さっさと夕鈴“様”の所へ行かれたらどうです?」
    「うん。行ってきまーす。」
    李順は衝立を眺めながら、再度深い溜息を吐くのであった。


    目次に戻る

    スポンサーサイト
    プロフィール

    美夜

    Author:美夜
    管理人は熱しやすく冷めやすいです。飽きるのが早いです。長続きしないと思われますが、どうぞそれまでお付き合いください。

    最新記事
    カテゴリ
    FC2カウンター
    リンク
    最新コメント
    月別アーカイブ
    最新トラックバック
    RSSリンクの表示
    FC2ブログランキング
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。